なぜ争いは大きくなるのか|交通事故動画を見て考えたこと

内容は、ある弁護士が依頼者の説明を信じて対応した結果、後から「虚偽ストーリーへの加担(口裏合わせ)」を疑われ、最終的に弁護士資格を喪失するという冤罪事件に遭遇した、というショッキングなものでした。

これは決して、他人事の特殊な話ではありません。
日々、お客様からお話を聞き、その内容を契約書や遺産分割協議書、各種報告書などの「書類」に落とし込む立場にある行政書士にとっても、身が引き締まる思いがする深刻なテーマです。

弁護士だけでなく、行政書士、企業法務、学校、病院、警察、保険会社など、「人の話を整理して文書化する立場」にあるすべての人に共通する罠だと感じました。


目次

なぜ争いは大きくなるのか

多くのトラブルにおいて、実は「事実」そのものよりも、「誰の視点で整理されたか」によって争いが肥大化していくケースがほとんどです。

例えば、以下のような問題が挙げられます。

  • 交通事故の過失割合
  • 学校内でのいじめ
  • 職場でのハラスメント
  • 親族間の遺産相続・家族間トラブル
  • 投資詐欺や契約トラブル
  • SNS上の誹謗中傷・炎上問題

これらのトラブルでは、「最初に強く話した人のストーリー」が、そのまま“事実”として固定化されやすい傾向があります。

しかし、そのストーリーの多くには、以下のような要素が複雑に混ざり合っています。

  • 本人の主観による「認識違い」
  • 時間の経過による「記憶のズレ」
  • 怒りや悲しみによる「感情の混入」
  • 関係者間の「上下関係」による忖度
  • 「こうに違いない」という思い込み

「一方的な記録」が争いを固定化する

警察の供述調書、会社の報告書、学校の聞き取り、専門家の相談メモ。これらはすべて重要な資料ですが、実際には「一つの視点」だけで作られることも少なくありません。

そうなると、もう一方の当事者は「自分の話が消された」「無視された」と感じてしまいます。

ここから、相手方や組織に対する強い不信感、怒り、対立が生まれ、泥沼の「言った・言わない」の応酬へと激化していくのです。


同席聴取がもたらす「偽りのストーリー」

特に危険なのは、関係者を同じ場所に集めて話を聞くこと(同席聴取)です。

  • 社長と従業員
  • 親と子
  • 上司と部下
  • 加害者と被害者

このような状況では、立場の弱い人は「空気を読む」「周囲に合わせる」「本音を隠す」ようになります。

結果として、その場では全員の意見が一致した“不自然なほど整いすぎたストーリー”が出来上がることがあります。しかし、後から客観的に見直されたとき、それが「誘導」や「口裏合わせ」、「虚偽供述」のように疑われる大きな危険をはらんでいるのです。


AI時代の「整理」の役割

私は最近、「AIを活用したトラブルの事実整理」について深く考えています。

ただし、AIに「相手を論破して勝たせる理屈」を作らせるのではありません。重要なのは「どちらが正しいか、どちらが悪いか」をジャッジすることではなく、「双方の認識を徹底的に分けて可視化すること」です。

具体的には、以下のように情報を仕分けて並べます。

  • 【Aさんの認識】(主観)
  • 【Bさんの認識】(主観)
  • 【共通している客観的事実】
  • 【食い違っている部分】
  • 【確認できる客観的証拠】(ドラレコ、LINE履歴、契約書など)
  • 【まだ確認できていない事項】

このように交通整理を行うと、「全部が激しい争い」に見えていたものが、「実はこの一部の認識だけが食い違っていたんだ」という核心が見えてくる場合があります。


「感情の代理人」ではなく「冷静な整理役」として

AIや私たち専門家が陥りやすい罠は、当事者の感情に感情移入しすぎて、片方に「有利なストーリー作り」に無自覚に関与してしまうことです。

しかし、本来トラブルの現場で求められているのは、お互いの感情を煽って火に油を注ぐことではなく、絡まった糸を一本ずつ解きほぐす「徹底的な整理」ではないでしょうか。

記録が専門家自身をも守る時代へ

録音を残すこと、時系列を細かく刻むこと、入力履歴や面談記録を正確にストックすること。

これらは決して、目の前のお客様を疑うためではありません。むしろ、「お客様の純粋な思いを守り、そして専門家自身をも守るため」に、どうしても必要な時代になっているのだと痛感します。

AI時代だからこそ、「誰が、いつ、何を言ったのか」を正確にグラウンディング(事実に基づいて固定)する重要性は、今後さらに高まっていくはずです。


TGS行政書士事務所が目指す「予防法務」のカタチ

TGS行政書士事務所では、無用な争いを煽るのではなく、「食い違いを冷静な整理に変える」という視点から、AIを組み込んだ新しい事実整理支援(予防法務サポート)を模索しています。

トラブルの芽を未然に摘むための「契約書・合意書作成」はもちろん、人と人、組織と人が調和(Mingle)を保ちながら、安心の法務基盤を築けるよう、客観的で誠実な書類作成をお手伝いいたします。

身の回りの小さなお困りごとや、契約に関する不安がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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