会話の力を、もう一度

SNS全盛の時代――
私たちは日々、膨大な情報を発信し、受け取っています。
けれど、ふと感じるのです。「本当に心が通じ合っているだろうか?」と。

そんなとき、私はある懐かしい番組を思い出します。
戦後日本の混乱のなか、人々に希望と知恵を届けてくれたラジオ番組――

「20の扉」です。

この番組は、男女5人ずつのチームが、司会者のお題を20回以内のYes/No質問だけで当てるというものでした。
質問はたった20回。でも、驚くほどの高確率で正解にたどり着いていたのです。
当時私は、女性チームがよく勝っていたのが悔しくて(笑)、子どもながらに「なぜ当てられるのか?」と不思議でなりませんでした。

数十年後、ふとしたきっかけで調べてみると、この番組の発案にはGHQ(連合国軍総司令部)の影響があったという説がありました。
なんと、軍事技術を応用した「問題解決の技法」が背景にあったというのです。

高校時代、先生に「2の10乗は?」と聞かれ、「1024!」と即答した記憶があります。
それを思い出しながら考えてみました。
Yes/Noで10回質問すれば、対象は約1000分の1に絞れます。
20回なら、100万分の1です。
つまり、20の扉とは、論理的に相手にたどり着くための、驚くほど洗練された対話技術だったのです。

SNSは便利ですが、一方通行になりがちです。
だからこそ、いま、ていねいに言葉を交わすことに価値があると私は信じています。
まずは、お話ししてみませんか。

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