― 売らない・配らないという現実的な落としどころ ―
ある自治体で、賞味期限切れの食品を同意書付きで提供する取り組みが議論になっています。
食品ロス削減が求められる一方で、賞味期限切れ食品の扱いには制度上の制約が多く、単純に「配ればよい」という話ではありません。
ここで立ち返るべき問いは、
「賞味期限切れ食品は価値ゼロなのか」という点です。
結論として、価値の有無ではなく、制度と責任の問題として整理する必要があります。
行政も民間も「責任を負えない」という構造
まず前提として、行政は食品の安全性を保証する立場にあります。
その行政が「賞味期限切れ食品の安全性」を保証することは制度上できません。
これは消極的な態度ではなく、行政の役割から見れば当然の整理です。
一方、民間が賞味期限切れ食品を販売すれば、
・販売責任
・説明責任
・商品としての品質保証
が発生します。
たとえ少額でも「売った瞬間に責任が生じる」ため、現実的には販売できません。
結果として、
・行政は関われない
・民間は売れない
という構造が生まれます。
だからこそ「売らない・配らない」という整理が必要です。
この状況を踏まえると、次の三つの原則が現実的な落としどころになります。
・売らない
・勧めない
・安全性を保証しない
そのうえで、食品ロス削減に協力してもらうという位置づけにする。
これが制度上もっとも無理のない整理です。
原則①:本人の意思で持ち帰る
対象は、賞味期限切れの保存食品に限ります。
そして次の三点を徹底します。
・賞味期限の意味を理解したうえで
・持ち帰るかどうかを
・本人が自ら判断する
食べるかどうかも本人の判断です。
これは「自己責任の押し付け」ではなく、
選択権を本人に戻すという考え方です。
原則②:対価ではなく「寄付金」
金銭の授受がある場合でも、それは食品の対価ではありません。
・価格を付けない
・販売しない
・あくまで食品ロス削減活動への任意の寄付金として受け取る
これにより、
・販売責任
・商品責任
・品質保証
を発生させません。
これは「食品の安全性」の議論ではない
本質は、
・制度
・責任
・そして本人の尊厳
をどう守るかという問題です。
まとめ
賞味期限切れ食品は、
・売るものでもなく
・配るものでもない
食品ロスという社会課題に、本人の意思で協力してもらう対象です。
知ったうえで、持ち帰るかどうかを自分で決める。
それが、行政にも民間にも無理のない、現実的な落としどころだと考えます。

