遺言書を作るとき」は現戸籍だけでも十分なのはなぜか?

「相続関係説明図(相続手続き)」では改製原戸籍・除籍謄本まで必要なのに、
「遺言書を作るとき」は現戸籍だけでも十分なのはなぜか?

◆ 結論:
✅ 相続関係説明図=過去を証明する作業(相続人確定)
✅ 遺言書作成=未来を設計する作業(意志表明)
この「目的の違い」により、要求される戸籍の範囲が異なります。

◆ 理屈の説明
【1】相続手続き・相続関係説明図の目的
▶ 被相続人が死亡したあと、誰が法定相続人かを正確に確定するために作成する

  • 相続人が生まれた順番・結婚・養子縁組・死亡などの変遷をすべて証明する必要がある
  • よって、出生から死亡までの戸籍の連続性(改製原戸籍 → 除籍謄本 → 現戸籍)が必要
    たとえ現在戸籍に載っていなくても、過去に子がいた可能性があるため確認が必須

    【2】遺言書作成の目的
    ▶ 今の時点での自分の意思表示(誰に何を相続させるか)を公に記すため
  • 誰が法定相続人かは参考にはするが、あくまで自分が誰に遺産を渡したいかが中心
  • 自分の現在戸籍(+配偶者・子の有無)を見れば、今の家族状況を前提に書ける
    将来誰が相続人になるかは、現時点の推定相続人だけ見れば十分
  • ◆ 図解イメージ
項 目相続関係説明図遺言書作成
目的相続人の確定財産の分け方を決める
戸籍の必要範囲被相続人の出生〜死亡の全戸籍現在戸籍で原則OK
過去の子の有無確認必要(法定相続人確認のため)原則不要(本人の意思で指定できる)
推定相続人の確認完全に必要現在戸籍で十分
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◆ 補足:推定相続人との関係

  • 遺言書の作成者は「推定相続人(現戸籍でわかる)」をベースに遺言を書くことが一般的
  • 例:配偶者と2人の子が現戸籍に記載 → この3人にどう分けるかを決める
  • 仮に「過去に認知した子」がいたとしても、遺言に書かれていなければトラブルにはなるが、 その存在を示す義務は現時点ではない

◆ 結論(もう一度)

✅ 相続人の「証明(確定)」が目的なら、改製原戸籍〜現在戸籍すべてが必要

✅ 遺言書の「作成(意思表明)」が目的なら、現戸籍で足りる

遺言作成時に現戸籍で大まかに相続関係を確認し、

もし「昔の子がいた」と気づいたときは、そのときに確認を深めればよい、という立ち位置です。

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