「ひきこもり」と“児童虐待防止法”

ひきこもり」の定義は、厚生労働省のガイドラインによると、社会的参加(就学・就労・家庭外での交遊など)を回避し、原則として6か月以上にわたって家庭にとどまり続けている状態を指します。
日本の「ひきこもり」の人数は、全国で推計約146万人とされています [特に、**40歳~64歳の層では女性の割合が52.3%**と半数を超えていることも注目されています。

【1】関連する法制度・条文

児童虐待の定義(児童虐待の防止等に関する法律 第2条)

児童(18歳未満)に対する下記行為が「虐待」とされる:

  • 身体的虐待
  • 性的虐待
  • ネグレクト(養育放棄) ← 食事・医療・金銭管理が対象
  • 心理的虐待(言葉の暴力、無視など)

親が「支援しているつもり」でも、本人の意思がまったく確認されていない状態が続くと、

支援機関により「不適切な養育」とみなされる可能性があります。

【2】18歳以上のひきこもりについて

児童虐待防止法の適用対象ではないが、以下の観点で「虐待的関与」や「養育放棄」の懸念を指摘されることがあります:

  • 生活保護申請の拒否
  • 医療への同行拒否
  • 親が判断をすべて代理する(成年でも)

→ このとき、本人の生活習慣・支援の合意を記録したノートがあると、家庭の“正当性”を説明できる。

【3】関係法令や行政実務との接続

法制度ひきこもりとの関係ノートの意義
児童虐待防止法18歳未満の支援拒否が「ネグレクト」とされる可能性食事・医療・金銭についての本人意思を記録しておくことで誤解防止
成年後見制度判断能力の低下がなくても親がすべて代理すると問題視される自分の希望を示した記録が「自己決定の証拠」になる
自立支援・生活困窮者支援行政が「世帯として機能していない」と判断するリスクあり家族支援の意思と本人の同意が記録されていれば支援に乗りやすい

【4】現場実務での問題点とノートの活用

現場の懸念ノートが果たす役割
「親が支援を拒んでいるように見える」本人の意思で「不要」と書かれていれば事情説明になる
「本人が何を考えているかわからない」対話や記録があるだけで、支援の入り口になる
「生活実態が把握できない」食事・金銭・日常記録が残っていれば支援判断の根拠になる

【結論】

「記録」は、“親の独断”でも“行政の誤解”でもなく、本人の意思と生活の積み重ねを可視化する唯一の証拠になります。

児童虐待や支援放棄の疑いを回避するためにも、行政書士が中立的に記録支援を行う意義は極めて大きいのです。

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